滋賀酒蔵元紀行 / 冨田酒造「七本鎗」
冨田酒造は、琵琶湖の最北端に位置する長浜市木之本で、470年以上に渡り酒造りを続けている酒蔵である。天文 3年(西暦1534 年)頃創業の、全国でも屈指の歴史ある酒蔵で、旧北国街道沿いの風情ある街並みの一角にある。写真にある街道沿いの木造蔵家屋が最も古く、瓦葺き三層屋根、土塀、門のある店構え。表側が店、奥が事務所や食堂、瓶詰め場といった作業スペース、2階が蔵元の住居となっている。この建物の奥には明治初期の築と言われる木造蔵があり、仕込みタンクや搾り、貯蔵といっ た酒造スペースとして利用されている。 銘柄は賤ヶ岳の合戦で武功を立て秀吉を天下人へと導いた加藤清正、福島正則ら勇猛な七人の若武者「賤ヶ岳の七 本槍」に因み、「勝利の酒」「縁起の良い酒」として喜ばれている。また、ラベルの字は逗留した北大路魯山人の手による篆刻を使用している。
十五代蔵元・冨田泰伸専務の語る「七本鎗」のコンセプトは、「地元の酒米を使い、 米の品種のブレンドをせず、単一品種で造る事。そして極力濾過をせず、米の旨みがしっかりしていて、それをまとめる酸が骨格を作るような食中酒」。仕込み時期にあたる冬場に蔵の前を通れば、蒸したお米や新酒の香りに包まれる。街なかにあり土地も蔵も限られたスペースの中で、効率のよい作業風景が印象的である。2020年 3 月、旧蔵の老朽化と作業効率向上のために新しい醸造蔵が竣工した。 歴史と景観との調和から低層の木造を採用し、最新の酒造りのための空 間や設備配置を構成しており、県内同業者からの注目される新蔵であ る。雪深い木之本の冬、この蔵で醸され発売される新酒が楽しみでならない。
(文・前谷吉伸)
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Produced by ななまち 前谷吉伸
Managed by 滋賀の酒とおくりもの「とくりや」
酒舗まえたに